テキストサイズ

僕は絵しか描けない

第12章 未完成のまま、僕は

葬儀の席で人目を憚らず、嗚咽してしまっていた。

周りの人は勝手な解釈をして僕に憐憫の目を向けてくる。

違うっ!!
そうじゃないっ!!
僕が泣いてるのはそうじゃないっ!!

僕が殺したんだっ!!
僕が詩子さんを殺したんだっ!!

大声で叫びそうになるが体が震えて声が出ない。

泣きながら体を震わせる僕はさぞ哀れに見えたことだろう。

それがまた、悔しくて、僕はその場にしゃがみこんだ。


「ちょっと……クロ」

突然詩子さんの声が聞こえて慌てて顔をあげた。

「詩子さんっ……」

目の前には詩子さんに似た少女が立っていた。

「しっかりしてよ……お姉ちゃんは死んだでしょ」

そうだ。
詩子さんは僕が殺したんだった……

「一回会ってるでしょ。妹の華子です」

「は、華子ちゃん……」

「ちょっと着いてきて」

華子ちゃんはお姉さん同様、有無を言わさず僕を従わせた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ