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僕は絵しか描けない

第12章 未完成のまま、僕は

華子ちゃんはひとしきり泣くと何事もなかったように立ち上がった。

そしてクローゼットを開けて段ボールを引っ張り出した。

「これ……」

段ボールの中から原稿を取り出して僕に渡す。

「これって……」

「お姉ちゃんの原稿……笑っちゃうくらい絵が下手なのに漫画家になりたいとか……お姉ちゃんは変わってるよね……馬鹿みたい……」

それは見たこともない詩子さんのネームだった。

「それ、描いて……」

「えっ……」

「クロ、お姉ちゃんの漫画、全部描いて」

見ると段ボールの中には詩子さんが描き溜めたネームがぎっしりと詰まっていた。

「これ全部……」

「ううん。これだけじゃない」

そう言って華子ちゃんはクローゼットの中から次々と段ボールを引っ張り出した。

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