テキストサイズ

僕は絵しか描けない

第12章 未完成のまま、僕は

段ボールは全部で五つもあった。
そしてそのすべてにぎっしりと詩子さんの描いた原稿が詰まっていた。

「描いて……クロ。お姉ちゃんが遂げられなかった夢、全部クロが叶えて……」

華子ちゃんは泣きながら笑っていた。

「華子ちゃん……」

「お願い……お姉さんの無念を晴らしてっ……」

僕は黙って頷いた。

断る理由なんてない。

だってこの段ボールの中にはまだ詩子さんが生きているのだから。

僕が殺した詩子さんを、僕が生き返らせるんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ