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僕は絵しか描けない

第12章 未完成のまま、僕は

とはいえ勝手に詩子さんの遺品を持ち去るわけにはいかない。

僕らは詩子さんのご両親に事情を説明した。

お父さんもお母さんも泣きながら『お願いします』と頭を下げてきて、僕は慌ててそれ以上に頭を下げた。

一週間後、詩子さんのネームが僕の家に届いた。
詩子さんの笑顔や怒った顔を思い出しながら、僕はその一つ一つを読んだ。

ギャグ漫画もあれば恋愛ものもあった。

そしてそのすべてに詩子さんの息遣いを感じる。

僕は涙で原稿を汚さないように読んだ。

詩子さんは、確かにここにいた。


感傷に浸るように読み漁っているうちに毛色の違う冊子を見つけてしまった。

絵の描かれていないその冊子の表紙にはこう書かれていた。

『日記帳』

僕の手はビクッと止まった。

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