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僕は絵しか描けない

第3章 信頼関係

馬場さんの描く絵はデッサンも色使いも大胆で独創的だ。

もちろん基礎的な力も充分にあって、その上に奇抜でかつ的確だ。

僕の描くようなただ見た目にきれいな絵は描かないだけで。

みんなは馬鹿にしてるけど僕には彼女の才能はわかっていた。

わかっているからこそ疎ましく、恐ろしく感じる。

美術部の描く絵をお遊戯だと嘲笑してひんしゅくをかったという話はきいていたが、彼女がサブカルチャー研究会に所属していたのは知らなかった。

確かにあの変わった同好会なら馬場さんもやっていけるのかもしれない。

そして僕は馬場さんの才能を認めていながらそれを口にしたことは一度もない。

認めてしまうのが怖いからだ。

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