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僕は絵しか描けない

第5章 仲直り

妹尾さんがセッティングしてくれた仲直り会の始まりはずいぶん気まずいものとなった。

「よお。久しぶり……」
「久しぶり……」

ぽつぽつと挨拶を済ませると妹尾さんは気まずい空気に気付いてない振りをして「じゃあ出発っ」と元気よく歩き始めた。
こういう屈託もなく明るいところが本当に素敵だと思う。

「ひなた、どこに行くんだ?」
「いいからいいからっ」

詩子さんも行き先を聞かされていなかった様子で、僕たちは戸惑いながら市バスに乗車した。
どこまで行っても二百円という市バスの厚意に甘えるかのように妹尾さんは下車ボタンを押さなかった。
僕らは一番後ろの席で妹尾さんを真ん中に座っていた。

「漫画、進んでる?」

妹尾さんはわざと空気を読まずに問い掛けてきた。

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