
キャラメル、甘く
第1章 *条件
「私、芸能事務所の者なんだけど!」
そこからはただ勢いに任せて、ひたすら喋った。ここまで緊張したのは久しぶりかもしれない。おじいちゃんをスカウトした時以来かも。
彼はひたすら感情のない顏で、私の説明を聞いている。
ううう…こわい。
でも、がんばれ私!
年下の男子高校生に怖じ気づいてどうする!
「相手役を是非、圭太くんにしてもらいたいの!お願いします!」
一気に言いきって、思い切り頭を下げた。周りにいた下校中の高校生達がぎょっとして、私達の前を通り過ぎていく。圭太くんも若干なに、こいつ的な目で見ている、ような気がする…
でも、やめない。
今が一番踏ん張りどころなのだ。
杏樹にとっても、
私にとっても。
