
キャラメル、甘く
第3章 *不透明な感情
「向こう、何も言ってこないの?」
「言うって…何をよ」
「『絢菜、この前は素敵な夜をありがとう!!』とか!」
「………」
「ごめんて」
冗談めいて言う朱莉に最早返す言葉もない。
“圭太くんがうちの事務所にくることになった”
「期待できるぞ!」
契約を取りに行った時、梶さんは大喜びだった。
私もその時一緒に付いていったけれど、彼はてっきり断ると思っていたのだ。
それがあっさり「いいですよ」、の一言で。
そりゃあ私だっていつもなら喜んでいるはずだけど…
そもそも彼は芸能界に興味があるのだろうか。
依頼した時すらあんまり関心を示さなかったのに(そりゃ特殊な依頼だったとは思うけど)、今頃になってやる気が出てくるなんてこと……
