
キャラメル、甘く
第3章 *不透明な感情
「圭太くん」
帰ろうとする圭太くんに声をかけたのは私から。
「帰るの?」
「あ、はい」
やんわりと振り向く彼は相変わらず気怠い雰囲気で。その雰囲気に、ああ、圭太くんだなと何だか再確認させられる。
久しぶりに声をかける。
あれ以来、どう接していいのか分からなかったけど…
ちゃんと、「普通」に戻りたくて。
だからさっき、梶さん達といる時にもう逃げないって決めた。
「気をつけて」
「……」
あくまで冷静に。
事務所の人間として。
ちゃんと声をかけられた、
と思う。
そのまま去ろうと背中を向けた時に、
かけられる声。
