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1人かくれんぼ〜貴方を呪います〜

第5章 事件


 この日、香織は教室に入ると変な違和感を感じた。

 いつも隅に追いやられ、落書きだらけの机が、元の中央の位置に戻っているし、落書きもどこにもなかったからだ。

 イジメが始まってから、香織が教室に入ってする事は、まず机を元の位置に直し、先生が来る前に落書きを消すことだった。

 おかしなものだ。

 イジメをされない事に違和感を感じるなんて……。

 香織は、自分でも知らず知らずのうちに、イジメにあうことが、当たり前に感じるようになっていたのだ。

 香織は思わず教室を見渡す。

 香織が教室に入ると、毎日必ず冷やかしにくるあの4人は、何事もなかったかのように、お喋りを楽しんでいた。


『イジメる事に飽きたのかしら? 単なる気まぐれ? それとももっと酷い事を?』


 香織は警戒する。

 身の回りを隅から隅まで確認したが、特に変わった所は何もなかった。

 クラスメイトは相変わらず、誰1人香織に話しかけては来ないが、そんな事はいつもされているイジメに比べれば、どうでも良かった。

 せめて今日だけは、このまま何も起こらないで欲しいと香織は願った。

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