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近くて遠い

第30章 3つの想い

────────…

ズキズキと痛むのは


頬ではない。



顔を上げると
1週間ずっと帰りを待っていた彼が顔を歪ませて私を見つめていた。



光瑠さん…



あなたは今も

私を通して

別の人を見ているの…?



「真希さんっ、どこですか!」


視界に私を探す
要さんの手が入る。



私だって……


幸せになりたい…



愛されたい…



「要さんっ…」



私はそう言いながら、

要さんの手を取った。



「大丈夫ですかっ!
怪我はっ…」


悲痛に叫びながら、要さんが強く私を抱き締めた。



ズキズキと

痛むのは



頬ではなくて


私の心……



「頬が腫れてるっ!
僕のためにっ…こんなっ…」


要さんはひどく慌てて私の熱を持った頬に手を当てた。


「…………待ってると…」


背後から低い声がして、
私はそれを聞いていた。




「お前は、
待ってると言ったじゃないか…」



その声に先程の覇気はなかった。



待ってた…



私はあなたを信じて…。



「社長っ!」


要さんは私を抱き締めながら、光瑠さんに強く怒鳴った。



もう…

ここにいたくない…




「………母が死んだら…


俺は用無しか!!!!!」



心ない言葉が部屋中に満ち溢れた。


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