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近くて遠い

第34章 Sweet Night

私は目の前に置かれた飲み物をじっと見た。


鮮やかなオレンジ色が、カクテルグラスの下に行くにしたがって濃くなって美しくグラデーションしている。



「乾杯しましょう」



要さんはその飲み物を持ち上げて私に渡した。



何も言えないまま、
それを持つと、



グラスとグラスが合わさって
チリン──
と小さな音を立てた。



要さんの持っている飲み物は、
モカのような色をしていた。


それをコクッと飲む要さんの喉の動きが妖艶で、

私はグラスを持ったままフッと目をそらした。


「……飲まないんですか?」



グラスを置いて、要さんが尋ねる。



せっかく用意してもらったけど…



「あのっ…
私、まだ未成年で…
せっかく何ですが、お酒は…」



そう言いながら、私は持っていたグラスをテーブルの上に置いた。



引こうとした手を要さんにギュッと握られて、私は顔を上げた。



「……知ってますよ?」



「えっ…」



要さんはニコリと笑って私の手を再びグラスに導く。


知っているなら何故…?



訳も分からず私はグラスを握ったまま要さんを見つめた。



「あなたを酔わせたいから…」



要さんの妖しい笑顔に
私はどうしてよいか分からず目を泳がせた。




「………と、言いたいところですが、


これ、ノンアルコールカクテルです。」




「えっ…!?」



妖しかった笑みが、

お祭りの時に見せたいらずらっぽい笑みに変わった。


からかわれてるっ……



そう思いながら、私は少し不満気に要さんを見た。



そんな私を見て、ハハハハと声を上げた要さんは、再びモカ色のカクテルを手に取って愉快そうにそれを飲んだ。


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