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近くて遠い

第34章 Sweet Night

んん、と私は唸りながら、握ったカクテルをじっくりみて、
恐る恐るそれに口をつけた。



口一杯に広がる柑橘系の香り…

昔よく飲んだ
オレンジジュースを思い出させるような、


そんな優しい味がした…




「……美味しい…」



「でしょ?」




揺れたグラデーションを眺めながら呟いた私に要さんが得意気に返した。




「オレンジとレモン、それとパイナップルジュースをシェイクするんですよ。」


「あ、パイナップルか…」

柑橘系の味のわりには甘いなと思った私は要さんの説明を聞いて、納得した。



「そのカクテルは、

サンドリオンっていうんですよ。」



「サンドリオン…」



何だか素敵な名前…



私はグラスに掛けられたオレンジを手に取った。



「……でもね、
もっとメジャーな名前があってですね…」



私はオレンジをかじりながら、首を傾げて隣に座る要さんを見上げた。


メジャーな名前?


じゃあサンドリオンは別名なのかな…?



色んな思いを巡らせる。



すると要さんの口角がまた少しだけ上がった。




「シンデレラ……


って言うんです。」



ドキっ──と心臓が高鳴った。

今日は何度要さんにドキドキしているんだろう…


「今日の真希さんはお姫様ですからね──

ノンアルコールだし、丁度良いと思って選びました。」



「っ…」



普通の人が言ったら、
間違いなく歯の浮くような台詞であるはずなのに、
要さんがいうと、違和感がないどころか、似合いすぎる。



「……あと、12時より前に真希さんを帰すという目標を掲げた意味もあります。」



優しい笑みが私に向けられる。



要さんはコクッとまた自分のカクテルを飲んでフッと息をついた。


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