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近くて遠い

第36章 目覚め

「知らない?
バカなことをっ…
何故そんな力付くで真希さんを手に入れておいて、物を捨てるように手放したのですかっ!」



冷静だった要が徐々に声を荒げていく。



「っ!!ふざけるな!
お前がっ、お前が奪ったんじゃないかっ!!」


光瑠は再び要に近付いた。


至近距離で二人が激しくにらみ合う様子に古畑と愛花は何も出来ずにただ息を飲んでいた。



「僕は彼女を愛している!
あなたはっ…!あなたはどうなんですかっ!!」




要の言葉に光瑠はワナワナと震える唇を強く噛んで黙った。




「答えてくださいっ…!!」


言葉を促そうと要が凄む。



ゆっくりと

光瑠は両の手を握りしめて震えた。



「俺はっ……!」








何度も


何度も


真希へ気持ちを言葉にしようとした


だが…



───────ひかる……あい…してる…よ…




「っ……」




裏切れない



何も無くなった俺を


支えてくれたあの笑顔を…


悠月の事を……。



再び光瑠は要に背を向けた。







何の迷いもなく

真希への愛を囁く

要のことを

見ていることが出来なかった。


それに

真希はこの男の手を

自分の目の前で取ったのだ…



「何故ですか…
何故あなたは何も言わないのですかっ…!!」


その率直な言葉に光瑠は
腹が立った。



「黙れっ…!!」




どうすることもできずに、
ただ嫉妬の念だけが渦巻いて胸が焼けそうになる。



「ご主人様っっ!!」



振り返った光瑠に


愛花が叫んだ。





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