俺様主人
第1章 氷堂 水樹
そこには燕尾服を綺麗に着こなした、20代半ばほどの水樹専用の執事が立っていた。
この男は、笹野 優(ササノ ユウ)。
新米執事だが出来が良く、水樹のお気に入りだった。
「なんだ、優。お楽しみ中だ」
ピシャリ冷たく言うが、優は顔の変化も見せず
「すみません、水樹様。旦那様がお呼びでして…」
とだけ伝えた。
水樹はチッ、と軽く舌打ちをし、ワシャワシャと自分の頭を掻きながら
「わかったよ、行く」
と、だるそうに返事をした。
くるっと後ろへと方向転換をして、“女”の元へと戻ると玩具をポイっと渡し
「勝手にやってろ」
とだけ言い残し、乱れた服を直しながらドアへと向かった。
そして、優に後10分したらアイツをここから出すようにと命じ、また気だるそうに父の元へと向かった。