テキストサイズ

不器用なタッシュ

第9章 霹靂

「いいや…寧ろ予定ないんだよね。そろそろアルコールもイケる時間かなと思ってさ」


香織の表情が曇る。


「あ…そっか…。」


「さっき香織がいない間に、食前酒で軽くキール頼んどいた。」


「えっ!」


「久々なんだから、もう少しいいだろ?」


今までの香織の性格からすると、はっきりとした理由がない限り断れない筈だ。


肘を杖に顎を支えて、勝ち誇った様に笑う。


「分かった…」


渋々と香織が椅子に座ると丁度、食前酒と前菜が運ばれてくる。


「えっ…これ…」


「適当に頼んだ。腹減ったし」


キールだけと思ってただろう…目を見開いて固まっていた。


そんなの気にする事なく俺は、グラスの柄を持ち


「じゃ…香織。乾杯」
「乾杯…」


恐る恐る差し出す香織のグラスに…軽快な音を鳴らしてやる。


『乾杯』…

これからの二人だけの未来にな…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ