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不器用なタッシュ

第10章 鎖

翌日…日曜日


約束は11時…
少し早めにアパートの前に着くと、香織が降りて来るのが見えた。


朝一でアパートに戻ったんだろうな…。


胸に鈍い痛みを感じながらも、今日これからの時間は、俺だけのもんだと優越感に浸る。


「よっ!」

「おはよう…」


香織の顔は妙に強張っていた。


大体の予想は付いている…
だけど絶対言わせたりしない。


あの…『呪い』の言葉。


先ずは二人っきりになってしまおう。


「久々だから、俺ん家でもいい?」


俺と香織が会う場所なんて、大抵が俺ん家だったし、香織が断って来た事は殆どなかったが…


「あのさ!郊外にアウトレットモールが出来たんだよ!なんか役立つモノとかあるかもよ!せっかくだからドライブがてらに行こうよ!」


香織なりに考えがある様だ…。


最近放置し過ぎてたし、香織がキレるのも案外厄介だから、ここは取り敢えず言うことを聞いておくことにする。


「ふ~ん…アウトレットね…。行ってみたことないから、少し回ってみるか」


そう言った瞬間、香織は嬉しそうに口元をムニムニさせていた。


ズッキン…


その顔…久々に見た。


「今ナビ入れるから…住所分かる?」


「あっ!うん!ちょっと待って!」


香織は張り切って、携帯で調べて


「嘉之ここなんだけど!」


俺に携帯を見せて来た。


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