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不器用なタッシュ

第10章 鎖

チクリ…


いつもの小さな痛みが胸を刺す。


でも…香織は俺のモノだと思いたくって


「香織…手出して」

「あっ…うん…」


そう言うと、香織は躊躇しながら右手を出してきやがった。


指輪って言ったら…


「左っ!」


だろがっ!


俺は香織の左手を引っ張って、薬指にリングをはめ込んだ。


「あら~素敵!お似合いですよ!」


店員が満面の笑みで褒め称えてくると、香織は思いっきり嫌そうな顔を見せる。


ズキズキズキズキ…


赤黒いシミが広がっていく。


生まれて初めてプレゼントした指輪…

初めて会った時の様に…

君に微笑んで貰いたかった…。


上から見ると…指輪をジッと見詰めて俯く、香織のつむじだけが見える。


『有難う』


その一言も…


貰えなかった…。


しょうがない…
これは、いつもの俺の恋愛パターン。


今までだったらこれで『バイバイ』だが、香織だけはそうはさせない。


「香織…向こうの方にインテリア家具あるから、見に行こうぜ」


「う…ん…」


俯いたままの香織の左手を…
願いを込めて強く握った。


どうか…この手を…


ずっと…


離さないで…。


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