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不器用なタッシュ

第10章 鎖

「な…どうしたの…いきなり」


俺の笑顔とは裏腹に、香織は泣きそう顔で虚空を見据えた。


ドックン…


徐々に過去の古傷が疼き出し…
嫌な予感が頭をもたげ出すのを俺は気付かない振りをする。


「ん~?ずっとバタバタしてただろ…色々落ち着いたからさ」


香織に刻印を刻む様に、頬にそっとキスをして…
目元、額へと…次々と唇を寄せていった。 


俺の唇が触れる度に、香織の肩が硬直して…


ドックン…ドックン…


俺の胸の奥からも…
ドス黒い物が吹き出してくる。


「また、な…んで?」


「…ま、今までしてもらうばかりだったしね」


正直な気持ちだった…
ずっと待たせた…
でも、もうずっと一緒に居られるんだよ。


想いを込めて、香織の唇の端に自分のを押し当て…
微笑んだ。


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