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不器用なタッシュ

第12章 時限爆弾設置

20分くらい経って、香織がバスルームから髪をタオルで拭きながら出てきた。


俺はドライヤーを持って、猫でも招く様に香織においでと手を伸ばす。


「香織、髪乾かしてやるよ!」


「いいよ…自分でやるから」


香織は明らかに、嫌そうな顔をしたが


「いいじゃん!やらせてよ!」


ここで引くわけないだろう!


「…分かった…」


俺の性格を分かっている香織は、観念して重い足取りでドレッサーの前に座る。


香織の流され安さの超一品なのも…
俺だった熟知していた。


香織の髪を乾かすの…
久しぶりだな…。


髪が絡まない様に丁寧に手で梳いていく。


「こうゆうの好きだった?」


「う~ん…何か仕上げてくのは、好きだよね」


「ふ~ん…」


聞かれたから、素直に答えただけなのに、香織は神妙な面持ちになった。


それだけで胸の奥に、小さい痛みがチクチク刺さる。


その痛みを無視したくて、更に話を広げく。


「知り合いが、バンドやってて、メイクとかしてやってたから、慣れたんだろうな」


「へぇ…メイク…」


「髪もツンツンに立ててやったな」


それでも香織と交わす他愛ない会話は、心地良くて…


このままずっと髪を乾かし続けたいとさえ思った。


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