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不器用なタッシュ

第12章 時限爆弾設置

数分経って、完全に香織の髪を乾かしきる。


「こんなもんかな!」


指通りが良くなった髪をひと束持ち上げて、流す様に落としていく。


触っているだけで気持ちがいい。


「うん…ありがとう…」


香織は神妙な顔をしながらも、髪を乾かした事に礼を言ってきた。


気持ち的には凄い複雑だろうな…
でも、シナリオはこれから本番だ。


俺は出来るだけ自然に、香織の肩を背後から抱き締め


「じゃ!祝杯しようぜ!」


テンションを上げて、明るい声で次の作戦を遂行していくが


「私…仕事に戻るから、飲まないよ」


俺の腕から逃れようと肩をずらして、香織は逃げ口上を使ってきた。


まぁ、これも想定内。


「…今日、直帰していいはずだろ。香織の分は、みんなで分配してやってもらえてるはずだよな」


香織の性格は把握している。
下準備も万端なんだよ。


「うっ…」


思惑通りに固まる香織が、凄く可愛く思えた。


「てか、服来ないと帰れねぇよな」


逃がさない様にキツめに抱き締め、ダメ押しをしてやると


「でも…戻ったら…」


香織も成長したのか、結構粘ってくるが、今日は絶対逃すつもりは毛頭ない。


「ゆっくり話ししよう。誤解があるなら解きたいから…」


頼られるのに弱い香織の耳元に、俺は少し甘える様に囁いた。

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