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不器用なタッシュ

第13章 奪回

香織も何か感じたのか、急に黙り込み出す。


香織と小田切を繋げているのが、俺の存在だということに気付いたからには、小田切への気持ちが錯覚だって解って来るだろう。


後は確実にこっちに引き戻しに掛かるだけだ…。


お互い無言のまま車を走らせ、数分後香織のアパートに到着した。


「あ、ありがとう…じゃあね…」


香織は慌ててシートベルトを外して、ドアを開けようとした時――――


「毎日、迎えに行ってやるよ。ずっと会えなかったんだし、イタリアの計画も進めたいしな」


俺が香織の男なんだと念押ししてやる。


俺の提案に香織は豆鉄砲でも食らったかのように、目を見開いた。


「嘉之…私、イタリア行かないって言ったよね…」


「毎日一緒に居られるんだぜ?今までずっと離れてたのが解決するんだから、いいんじゃねぇの? 寂しかったんだろ?」


「そう…だったけど…」


流されやすい香織だ。


寂しいから、心の隙間に入った小田切に流されてるだけだ。


俺とまた一緒に居れば、直ぐにまた元に戻れる――――


そう思いたかった…。


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