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不器用なタッシュ

第13章 奪回

泣きそうだったり、苦しそうな顔をすると香織はいつも一所懸命になってくれたから、俺は無意識にそんな仮面を付けることを覚えたのかもしれない。


でもそれは、誰よりも香織のことを必要としているからこそだ。


悪気は決してない――――。


案の定、香織は少し揺れている。


もう少し……
あと、もう少し……。


「き、嫌いとかじゃなくて…」


「俺も…基盤作るのに必死だったからさ。距離作ってほったらかしにしてたから、香織を不安にさせたんだよな」


「え…」


俺の言葉に香織は怪訝な面持ちになったけど、その反応も、胸に落ち続ける暗闇も今は無視した。


「でも…香織がずっと見ててくれてると思ったから、辛くても頑張れたんだよ」


「嘉之…」


本当だよ……

君が言ってくれた言葉を俺は信じて、二人の未来を作っていこうとしたんだ。


だから――――


「裏切らないよな…香織?」


声のトーンを落として、香織をジッと見詰める。


「裏切る?」


「俺たちの6年…簡単に壊せないだろ? いいの…それで?」


そう言うと、香織は目を見開いて固まった。

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