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不器用なタッシュ

第13章 奪回

きっと俺たちの6年間を思い返すだろう。


色んなことがあったけど、どんな時も乗り越えて来ただろう?


それを消すことは、真っ暗な闇の中でも出来やしないさ。


小田切が俺たちの6年ごと香織を受け止めると言ったが、そんなの出来る訳ないんだ――――


だって俺と香織の6年だからだ。


「私…もう行かないと…」


香織は覚束ない感じで車から降りようとした。


これから小田切の元へ行く香織を本当は縛ってでも行かせたくない。


だけどそれは時期尚早だ。


今に香織は絶対に俺の所に戻ってくる。


その証を君に刻もう――――。


俺は香織の大きな瞳を見詰めて、ゆっくりと囁く。


「最後…だよ」 


「あっ…」


「小田切との最後の週末…楽しんでこいよ。逃げても……」 


君が直ぐに戻って来れるように――


君のカンバスに俺の色を落としていくよ――――


君は俺の手から――――


「追いかけるからな……」




逃げれない――――――――。

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