テキストサイズ

不器用なタッシュ

第13章 奪回

■□■□■□■

月曜日――

今日から毎日、香織が帰る時に車で迎えに行く。


夜さえ拘束してしまえば、小田切の所へは簡単には行けなくなるだろう。


香織のアパートにしても、俺のマンションに連れ込んだとしても、香織が眠るまで一緒に居るつもりだ。


我ながらナイスアイディアだと思った。


そして俺と香織が一緒に居ることに、悔しがる小田切を想像するだけで、ドロドロした気持ちが晴れていく。


だから土日は最後の情けで、小田切に香織との思い出を作らせてやった。


これから俺たちが紡ぐ何十年に比べたらたかが四48時間くらい、小田切に分けてやっても痛くはない。


「結局、俺たちの6年間は誰も壊せやしないんだよ……」


勝ち誇った気分で口元に笑みを浮かべながら、携帯を手に握る。


スクリーンに表示された時間は、『11時』――――


香織の仕事が終わるまで、まだ数時間はある。


「てか、香織何時に終わるんだ?」


思えば香織の仕事の状況とか詳しく把握していない。


一緒にプロジェクトを組んでいた時は、毎日忙しそうだった。


「それでも……ご飯、作りにきてくれたよな……」


必死で作品を作る俺の傍で、香織は甲斐甲斐しく面倒を見てくれた時を思い返す――――。


あの時、香織が頑張ってくれたから今の俺があるんだ。


だから香織を絶対に幸せにしてやりたい――――。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ