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不器用なタッシュ

第13章 奪回

18時

昼に香織から連絡がきた時間になった。


予定通り終わったみたいで
『15分後に下におります』
とさっきメールもよこしてきた。


「やればできるじゃんか」


素直に俺の言うことをきく香織が可愛く思えて、携帯のスクリーンを見ながら口元に笑みを浮かべる。


香織の会社は都心の通り沿いにある。


交通量も結構あるから、長いこと路駐もしにくい。


「15分って、長くね?」


時計をみると18時5分だった。


香織が会社を出るまで、あと10分もある。


「早く出て来いよ……」


入り口のドアをガン見して、出てくる社員をチェックする。


違う、違う……

香織じゃない!!


似たような雰囲気の女もいたけど、香織じゃないって直ぐに分かった。


それだけ俺の中では、香織は格別だったんだ――――。


18時10分……

もう出て来たっていいだろう?


痺れを切らした俺は、香織の携帯に電話を掛ける。


プルルル……プルルル……


コール音が数回鳴り続く。


「たっく! 早く出ろよ!」


ほんの数秒さえも香織との距離を取られることが、胸の中の靄を広げていく。 


コール10回目――


香織はようやく電話に出た。

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