
不器用なタッシュ
第14章 発動
当の香織はというと――勝手に話が進んでいくことに唖然としていたが、業を煮やしたように発言を始める。
「でも……例え社長が承認しても、私が行くとは限らないですよね?」
「いや、それが取引先が、立案者に是非会いたがってまして! 凄いことなんですよ! ねっ須永くん!」
香織なりに細やかな抵抗を見せてみたものの、辻さんの暴走にあっさり阻止された。
無駄だよ、香織――――。
これは香織ありきで進んでいる企画だ。
いくら抵抗したところで、根回しなんていくらでも出来るんだよ。
笑みを浮かべながら香織を見やると、恨めし気な顔で俺を睨んでいる。
状況が優勢なせいか、そんな表情さえ愛おしく思えた――――。
ぷっ!
なんちゅう顔、してんだよ。
ヒートアップした場を鎮めるかのように、井関さんが冷静な声で話を一段落させてきた。
「分かりました! 前向きにこの企画、上に通してみます。また、ご連絡致しますね。渡辺さん……面接の時にイタリア行きたいって言ったんでしょ。もしかしたら夢が叶うかもしれないわね! 良かったわね~! 須永さんに感謝しないとね!」
「えっ……それは……」
香織のイタリア行きを入社当時から応援してきた尊敬する上司の言葉に、香織は言葉を失っている。
まぁ、言えないよな。
今はイタリアへ行きたくないって。
それも理由が、『男』とは――――。
酸欠の魚みたいに口をパクパクしている香織を眺めながら、心の中で毒づいた。
「でも……例え社長が承認しても、私が行くとは限らないですよね?」
「いや、それが取引先が、立案者に是非会いたがってまして! 凄いことなんですよ! ねっ須永くん!」
香織なりに細やかな抵抗を見せてみたものの、辻さんの暴走にあっさり阻止された。
無駄だよ、香織――――。
これは香織ありきで進んでいる企画だ。
いくら抵抗したところで、根回しなんていくらでも出来るんだよ。
笑みを浮かべながら香織を見やると、恨めし気な顔で俺を睨んでいる。
状況が優勢なせいか、そんな表情さえ愛おしく思えた――――。
ぷっ!
なんちゅう顔、してんだよ。
ヒートアップした場を鎮めるかのように、井関さんが冷静な声で話を一段落させてきた。
「分かりました! 前向きにこの企画、上に通してみます。また、ご連絡致しますね。渡辺さん……面接の時にイタリア行きたいって言ったんでしょ。もしかしたら夢が叶うかもしれないわね! 良かったわね~! 須永さんに感謝しないとね!」
「えっ……それは……」
香織のイタリア行きを入社当時から応援してきた尊敬する上司の言葉に、香織は言葉を失っている。
まぁ、言えないよな。
今はイタリアへ行きたくないって。
それも理由が、『男』とは――――。
酸欠の魚みたいに口をパクパクしている香織を眺めながら、心の中で毒づいた。
