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不器用なタッシュ

第14章 発動

本心からの言葉が響いたのか、いつも毅然としている井関さんも表情を和らげた。


「じゃぁ申し訳ありませんが、渡辺をお願いしても良いですか?」

「はい。お任せ下さい。渡辺さんの住所聞いても大丈夫ですか?」

「えぇ、今メモに書きますね」

「……ありがとうございます」


何かあった時のために、部下のことをきちんと把握しているんだな――――。

香織、お前が信頼する上司は本当に立派だな。

俺のアシストも、きちんとこなしてくれたよ――――。


ほくそ笑みそうな衝動を満面の作り笑顔に書き換えて、井関さんに向ける。


「そうだよな! 須永くんの言う通りだよ! 渡辺さんは須永くんには、無くてはならない存在だよな!」


俺の腹の中なんて知る由もない辻さんは、一人感動で目を潤ませていた。

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