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不器用なタッシュ

第17章 強行突破

「そんな……一言で、壊れたのかよ……俺たち」


やっぱり、呪いの言葉じゃねぇか。

俺たちは同じ夢で繋がっていけた筈なのに――――『好き』って言葉に囚われて、大事なものまで見失って――――壊された。


落胆する俺を見上げる香織は、どこか遠くを見詰めているみたいに目を細める。


「今となっては、最初からだったのかもね……。もっと素直になれれば良かった……」


最初から――――?

出会った最初から、壊れていたのか?

何だよそれ、訳わからねぇよ――――だったら、

「なら、今からでいいだろ」

「時間じゃないよ。嘉之は私のこと……好きだったのかな?」


はっ――――?


香織の問いかけに、言葉を失った。


『〇〇』に決まってるだろ――――!


香織への想いは誰よりもあるのに、言葉が浮かばない。

簡単に言葉に出来る訳がない。

この想いは言葉でなんかで表すことが不可能だ――――!


答えられないで固まっている俺に、その理由を理解してくれない香織が責め立ててきた。


「答えられないのに……私とイタリア行くの? 今、抱くの?」


違う――――答えはある。

ただそれを言葉に発せられないだけだ。

言葉にしてしまったら、今までの俺が、香織への気持ちが、全部偽物になってしまいそうで怖い――――。


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