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不器用なタッシュ

第17章 強行突破

「違う……そんな好きとか嫌いとか……チープなもんじゃないんだよ」

解ってくれよ――――

「チープ? チープじゃないよ。好きも嫌いも……凄く大事なのに……」

香織、お前だけは――――

「そっか……ごめんね嘉之……」

――――解って――――。


「な……ん……」

「シエロのダークグリーン……」


ドックゥン――――心臓が大きく脈打つ。


俺と香織を拭き合わせた『シエロ』。


『凄い優しい、色使いしますよね……。誰かの為に描いたのかもしれませんが、先日……須永さんがポストカード下さった時、何かこの作品そのものかなって……思ってしまって……』

あの時君は、そう言ってくれたけど――――

『複雑そうで、寂しいそうで、面白くて、結構クセが強いけど、奥底は優しい……感じかな……』


「気付くだけじゃ……ダメだね」

「あっ……」


――――――――解って――――いなかった?


直感だった――――俺たちは分かり合っているようで、解ったいなかったんだ――――。

それでも――――いい。

それでも構わないから――――


「香織……一緒に……」

「嘉之……やっぱり、イタリアには行けない! 小田切さんは、私が守るから! 何されても変わらない!」


俺の死に物狂いの哀願を香織は、残酷に切り捨てた。



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