テキストサイズ

不器用なタッシュ

第18章 旅立ち

俺と違って安岡が人望が厚いのは、こういうところなんだろう。

絶対、俺が手に入れられないものだ。

だから俺には、安岡も必要だったんだと思う――――。

「安岡……色々……悪かった」

素直に謝ると、

「おう! 本当だよ! 詫びに俺と彼女の結婚した時に、最高傑作の作品をプレゼントしろよな!」


相変わらず冗談のような、だけど安岡らしい返しをしてくれた。


「は……そんなんでいいのか?」

「勿論! いざっという時、売ってやるから!」

「ははは……ひっでぇ……」


あぁ――――それがいい――――。


これくらいのノリが、丁度良くて救われる――――。


「……じゃぁ、行くわ」

「おぉ! 達者でな! 二度と日本に戻らないつもりで頑張れよ!」


これまた本気なのか、励ましなのか――安岡の言葉に苦笑いしながら、搭乗口に向かおうとした時だった――――。


「嘉之っ!」

俺の名前を呼ぶ安岡の声が、切なそうに響く。

「安岡?」


振り返ると、安岡は顔を赤くして涙目になっている。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ