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不器用なタッシュ

第19章 エピローグ

パタン――――部屋に戻って、買ってきた飲み物や食料をしまう。


管理人さんから勧められたパン屋に行ってみた。


軽く食べるには手ごろだし、種類も豊富で見ていて面白かった。


慣れない土地と、新たな環境が余計なことを考えさせる余裕を無くしてくれて、何となく救われていた。


でも――――

「描かなきゃな……」

そのために俺はイタリアに来たんだから。


本格的に企画が始動するのは、まだ少し先だが、今の内に描けるだけ描いておいた方がいいだろう。


そう思って毎日カンバスの前に座るが、思うように描けない――――。

てか、描きたいものが浮かなばい――――。

俺この先、描き続けること出来るのか?


ポタ――――落ちてきた不安色の絵の具が、俺を侵食し始める。


頭がグラグラする――――。


この闇に落ちたら、また暫く浮上出来ない。


「助けて……香織……」


反射的に香織の名前を呼ぶと、圧し掛かってきた重みが軽くなって気持ち楽になれた。


「は……はは……」


香織にはもう会えないのに――――。


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