テキストサイズ

身代わり妹

第1章 苦悩

姉が入院すると、母は泊まりで付き添いになる。

28年間、母親もほとんど病室で姉と過ごしている事になる。


仕事が忙しくてほとんど帰らない父親 (実際は愛人宅で生活していたのだと後から祖父母に聞いたのだが……)

同居していた父方の祖父母の元で、私は両親とも姉ともほとんど会う事なく育てられていた。


───5歳の時、

姉に元気になって欲しくて、必死に作った不恰好なおにぎりを持って1人で秋村病院へと向かった。

姉の病室も知らず、院内で迷っていた私。

その時、声を掛けてくれたのが由美さんだ。


由美さんのお陰で、ようやく姉の病室を見つけたが、満面の笑みでおにぎりを渡した私に、

「こんな汚いの食べれない」

と、姉は私の顔に向けておにぎりを投げつけた。


「美姫ちゃんの病気が悪くなったらどうするの! 帰りなさい」

母にまで怒鳴られ、泣きながら謝り姉の病室を出た。


そんな私を、由美さんは何も言わずに抱き締めてくれた。

まるで、今みたいに……。


それ以来、由美さんは私の事を娘のように可愛がってくれている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ