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身代わり妹

第6章 暗転

もうこのまま姿を消したかった。


誰にも知られたくない。

誰の顔も見たくない。





田口さんの部屋から、フラフラと寮へ戻りベッドに倒れこむ。

工場のバイトの時間なのに、身体が動かなかった。


─────もう…工場のバイト辞めよう。


夜だから高めの時給が魅力的だったのに、

一晩でこんなに大金を稼ぐとそれすら馬鹿馬鹿しい。



「─────…っ」

私は田口さんに渡された紙袋を抱き寄せた。

戻ることは許されないと、

紙袋の重みが告げてくる気がした。



明日…この辛い現実から逃げ出そう。


姉と凌太が結婚するなら、姉のお金の面倒は凌太が見ればいい。

ちゃっかり母もお世話になるんだろう。



……絶対、

絶対絶対、凌太に迷惑掛けるけど……


散々お世話になった由美さんと凌太に、

恩を仇で返すなんて……

本当に本当に最低だけど……‼︎


でも…

もう、これ以上ここにいるのは辛い。


だから……ごめんなさい。



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