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身代わり妹

第7章 喪失

ガチャッ

寮の美優の部屋は鍵が掛けられていなかった。


「美優……?」

口から出た声は震えていた。



「入るぞ?」

ゆっくりと部屋の中に入る。



キッチンは美優が生活していた形跡をとどめている。

綺麗に磨かれたシンク。

使い込まれた鍋やフライパン。

調理器具や調味料…冷蔵庫の中もそのままだ。


その奥に一部屋……リビング兼寝室。


ベッドには美優の姿がない。

触れてみれば冷たくて、昨晩美優がここで寝た形跡がなかった。


クローゼットを開ける。

その中身は………入っていなかった。



ドクドクと心臓が嫌な音を響かせる。


─────何で?



「美優? 美優? どこだよ⁉︎ 美優‼︎ 」


広くもない部屋の中をあちこち探し回る。

全て見て回っても足は止まらない。

洗面台の下やシンクの下……あり得ない所の引き出しを開けてみては美優の姿を探した。





「─────…っ」

テーブルの上に置かれた鍵を見つけた瞬間、

俺の背中に嫌な汗が流れ落ちた。



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