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身代わり妹

第8章 本心

<side 凌太>


美姫が目を覚ましたと、美優の母親が興奮した様子で呼びに来た。


─────すごいな…

担当医の話を聞いたばかりの俺には信じられないような話だ。


人間って、最期に奇跡を起こすのかもな。

この奇跡を美姫はどう使うのか……



トントン

美姫の病室のドアを叩き、ゆっくりと開ける。


ベッドの上で力なく笑う美姫。


─────ホントに目を覚ましたんだ……。


俺に向けて伸ばされた美姫の痩せ細った手。

儚げなその手を、気付けば両手で包むように握っていた。


「美姫……」

頼むから気付けよ。


お前の為に、誰が一番自分を犠牲にしてきたのか…

お前のワガママに、誰が一番傷付いたのか…


お前を想い、

安定した場所を手放した美優の存在に……

感謝しろとは言わない。

せめて、

気付けよ……。



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