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身代わり妹

第9章 再会

時計を気にする女将さんに、院長先生が声を掛けた。

そして、

「じゃあね、美優。いつでも遊びにおいでね」

女将さんは病室を出て行く。


凌太がタクシーを呼び、正面玄関まで見送りに出て行った。



部屋の中には院長と由美さんと母と私の4人。

重苦しい空気が流れる。



「凌太はね、この病院の跡取り息子なんだ」

院長先生が口を開く。


「医者としての経験はまだまだ未熟だけど、院長としての素質はある。僕は凌太を次期院長にと考えているんだ」


顔を上げ、院長先生の顔を見る。

─────何が言いたいのだろう。

院長先生の表情からそれを読み取るのは難しい。



「凌太ももう29だ。跡取りとして、相応しい相手を選び、更なる跡取りを産んでもらわないと困る」


……だから…私には諦めろって事?

─────何を?

凌太を?

……それとも……


「……っ……‼︎」


赤ちゃん?

凌太との赤ちゃんを諦めろって言うの⁈



「違っ…父親はっ…凌太じゃっ……」


─────ズキンッ

鈍い痛みが下腹部に走る。



「美優?」

顔をしかめお腹を押さえる私に、由美さんが駆け寄る。


「お腹…痛い……っ‼︎」

蹲った拍子に、ドロリとしたものが下着に落ちる感覚がした。



「美優⁉︎ 」

私を抱き締める由美さんに縋り付く。

「由美さん…お願いっ…私はどうなってもいい……だから…赤ちゃん…助けて……‼︎」


涙が頬を伝う。

初めて見つけた、私の生きる意味。

守りたい…私を母親に選んでくれたこの子を……‼︎

大好きな、凌太の子を……‼︎





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