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身代わり妹

第9章 再会

由美さんが連絡しておいてくれたお陰で、産婦人科に着いてすぐに診察してもらえた。


ドッドッドッドッ

聞こえてくる早めの心音。


そして、

「赤ちゃんの心臓動いてるね、ひとまず安心!」

先生の一言に、ホッと胸を撫で下ろす。



「すげー…人間の形してる……こんなちっさいのにちゃんと生きてる……」



先生の視界を遮りかねないくらいの距離で、エコー画像を食い入るように見ている凌太。


「医者が感動してるよ……産科に研修は行かなかったのか?」

苦笑いの先生が、エコー画像を写真にして渡してくれる。


「俺の子なんだって思うと、何か、普通に感動する」

エコー画像の赤ちゃんを愛おしそうに触りながら呟く凌太に、私と先生は顔を見合わせて笑った。



「凌太くんもお父さんかぁ! 会う度、由美の後ろに恥ずかしそうに隠れてた凌太くんがねぇ…。月日が経つのは早いものだねぇ」

由美さんの友達の婦長さん、波多野 夏実[はたの なつみ]さんが凌太の背中をバシバシと叩いた。


「いつの話? 俺もう29なんだけど?」

不貞腐れた顔で夏実さんを見る凌太。


久しぶりに、心の底からの抑えきれない笑顔が込み上げてくる。



─────幸せ…。

私の人生が、この子のお陰で輝いた。


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