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身代わり妹

第3章 解禁

<side 由美>

美姫さんの病室から美優が飛び出して来たのが見えた。

後ろ手にドアを閉め、そのまま廊下で蹲る。


「美優っ⁉︎」

慌てて駆け寄り、美優を抱き起こす。


顔色が悪い。

胸を押さえ、荒い呼吸をしている。



(─────発作⁉︎)


「凌太はっ⁈ 凌太呼んで‼︎」

騒ぎに気付き、駆け寄ってきた看護師に凌太を呼ぶように指示する。


「美優っ! ゆっくり呼吸して」

美優のブラウスのボタンを外しながら声を掛ける。


冷や汗がすごい。

何かあったのか…

それとも苦しいからなのか…

美優の目からは涙が零れていた。



「由美…さん……?」

消え入りそうな声で私を呼ぶ美優。


「美優! しっかりして!」

ギュッと美優を強く抱きしめれば、安心したかのように美優の身体から力が抜けていく。



「ストレッチャー持ってきて‼︎」

ナースステーションに向けて叫んだその時、


ガラッ

美姫さんの病室のドアが開く。



「……婦長のくせに慌て過ぎ」

美姫さんの病室から現れた凌太の冷静な声。


(それで…美優は泣いていたのね……)

美優を抱き上げる凌太の後ろ姿に納得する。


きっとまた、あの部屋の中で何かあったのだろう。

美優も凌太も、すぐに一人で背追い込む。


人前で泣けない2人に、

母親として何もしてやれない事に悔しさが溢れた。

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