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身代わり妹

第3章 解禁

点滴に繋がれた美優の細い腕を握りしめる。


「受付の諸田さんの話だと、最近仕事中も度々調子が悪くてトイレに駆け込んでるって……」

美優を休ませる旨を受付に電話した時、美優の後輩の諸田さんはそう言っていた。


美優の人柄がわかる。

美優が倒れたと聞いた諸田さんは、涙声だった。



「美優の痩せ我慢と無理し過ぎは昔からだろ。母さんは過剰反応し過ぎ」

美優の髪を撫でる凌太の優しい手つきに、2人が不憫で泣きそうになる。


「可愛い娘が目の前で倒れたら、母親はパニックになるのよ!」

美優の事は5歳の時から知っている。

わが子同然。息子しかいない私にとっては、可愛い娘だ。


それなのに、

美優が倒れたと聞いても、美優の母親は美姫さんの傍を離れようとしなかった。


美姫さんは、何故か嬉しそうに笑っていた。

押し殺せなかった声が高笑いになって、廊下まで響き渡っていた。


美姫さんはきっと、凌太が好きなんじゃない。

美優への嫌がらせで凌太と付き合ってるんだ。


美優だけじゃない、凌太だって傷ついている。

凌太は美姫さんの気持ちに気付いてる筈なのに……。

それでも美姫さんに付き合うのは、

医師として、また治療拒否をされないためなのだろうか……。



どうしたら私の可愛い息子と娘が幸せになれる?

私に出来る事を探すのに何も見つからず、2人が別れて半年も経ってしまっていた。


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