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身代わり妹

第5章 揺心

「美優! お誕生日おめでとう!」

母の言葉に、美優とグラスを鳴らし合う。


「美優も24かぁ……」

感慨深げに母が言う。



初めて会った時、美優は5歳だった。

(あれから19年……)

まさかこんなに長い付き合いになるなんてな。


そして─────…


俺はポケットの中に手を入れる。


誕生日に渡せなかった指輪…

今日渡すのは…無理だよな……。



秋村病院に戻ってきてからの何ヶ月間か、美姫とその母親を間近で見てきた。


美優の母親は、自分が楽をしてお金が貰えればいいという人間だ。

いざとなれば金でどうとでも出来る。


でも、美姫は違う。

今まで母親や美優を使って、何でも手に入れてきたのだろう。

だが、健康な身体だけはいつまで経っても手に入れられない。

だから健康な美優が憎いんだ。



美姫は俺が好きな訳じゃない。

美姫は、美優が恋する相手を奪いたいだけなんだ。

見せつけて、美優の傷付いた顔を見たいだけなんだ。


健康な…美優への当てつけのためだけに……。




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