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身代わり妹

第5章 揺心

潜もったバイブ音が微かに聞こえる。


「あ……」

バッグから携帯を出した美優が一言漏らし、すぐにまた携帯をバッグに戻した。


「出ないの?」

母が怪訝な顔をする。


「…後で…掛け直すから……」

困ったように笑う美優。




今朝の待合室での騒動は、看護師達の立ち話で聞いていた。

浅川 奏佑…17歳……。

周りなんか気にせず、何でも全力でぶつかれた十代。


美優が年下を相手にする訳ない…

そう思っても、モヤモヤと急かされるような気持ちになっていた。



「……あいつと…付き合ってんの?」

母がキッチンへ立った隙に美優に聞く。

顔を赤くして首を横に振る美優に、不安を覚えた。


「……付き合うの?」

「…………わかんない……」


わかんない?

可能性はあるって事かよ⁈



「は⁉︎ わかんないって何だよ? 自分の事だろ⁉︎」

心の中のモヤモヤをぶつけるように、美優に怒鳴っていた。


「わかんないよ‼︎ 私は凌太みたいに簡単に気持ち切り替えられない!」

一瞬怯んだ美優。すぐにそう言い返す。


簡単に?

バカ言うな。

俺は今でもお前が…

美優だけが好きなんだよ‼︎



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