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素直になれるか?

第1章 こんなはずじゃ…

「課長。例の×××とのタイアップ企画ですが、向こうの提示条件で、手を入れたいところがいくつかあるんですが、今時間とれますか?」
資料を片手に、課長の目をジッと見つめる。
まつ毛がやたらと長く、その分目元が大きくパッチリとした印象になるのを、実は本人は嫌がっていることを知っている。
「ああ…いいよ。どこ?」
資料の方に顔を寄せてくるから、その耳元で囁いてみる。
「あんたが今欲しい」

課長は不自然じゃない程度に、ゆっくりと態勢を戻し耳元を隠すように手をそえた。
「それは…ちょ、っと無理…だろう…」
周りには当然社員たちが平常勤務をしているわけで。
「会議室空いてませんかね?」
内海の目から視線を外さずに、口元だけで笑う。
「どうかな…」
途端に耳まで赤くなった課長の反応が、二人だけに分かる秘密の暗号のようで、嬉しくなる。

「顔。赤いです」
こっそり耳打ちして、会議室に向かった。
ついてくると確信していた。



「課長、そんな端っこにいたら打ち合わせできないじゃないですか」
「お前のいう打ち合わせは怪しいから、な」
赤い顔で、俺を睨むように視線を投げてくるこの人が、愛おしくて仕方ない。
「ちゃんと仕事ですって。ほら」
手を差し出し笑顔を向けると、おずおずと近寄ってきて俺の手を取る。

課長の指先をつまみ、やわやわと指を這わせた。
「加瀬…宮…それ、やめろ」
「あんたの手、好きだ」
手を引き寄せ、その甲に唇を寄せた。

「手だけじゃないですけどね」
掴んだ手を強引に引き寄せ、内海の腰を抱き寄せた。
「だから、ダメだって。会社じゃ…」
「家までなんて、待てない」

まだ文句を吐き出しそうな課長の唇を、ゆっくりと塞いだ。

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