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素直になれるか?

第1章 こんなはずじゃ…

課長の唇は見た感じ薄くて形が良い。
でも唇を合わせてみると、その感触は柔らかいのだ。
上唇を食み、下唇に自分のそれをすり合わせる。
温かく、むにむにとした感触はそれだけで気持ちがいい。
しばらくそうして唇の感触だけを楽しんだ。
ふっくらとした課長の唇は、しっとりと熟れて赤く熱を孕んでいく。

「もう、いいだろう?」

内海は無理やり俺を引き剥がすと、ふいと顔を背けてしまった。
流石に怒らせたかな。

「あんたが欲しい」

それでも、思ったことが口からこぼれ出た。

「あんたのことを考えない時はないんだ。好きすぎておかしくなりそうだ」
ふんわりと内海を抱き寄せ、その頭に顔を埋める。
シャンプーの匂いと、柔らかい髪に包まれて、いっそのこと食べてしまえたらいいのに、なんて思った。
一つに混ざり会えたらいいのに…。

「加瀬宮…気持ちは分かるが、会社ではまずいだろう?家に帰ったら…な?」

何時ものように頭をぽんぽんと叩き、その手が俺の後頭部に回った。
ゆっくりと引き寄せられ…

唇が重なった。



課長からキスをされている…
しかも…

ぬるぬると甘い舌が滑り込んできた。

舌先が触れると、ピクリと後退したがすぐに舌全体を絡め取られた。
お互いの唾液をくちゅくちゅと混ぜ合いながら、ねっとりと戯れる。
侵入者は俺の口内を自在に動き回るが、それは決して強引ではなくゆっくりと絡みつくような、甘さを伴った痺れのような。
離れては追いかけ、逃げると捕まる。
時折鼻から抜ける呼吸が湿った音を伴い、課長の艶っぽさを増大させて、ついでに俺の下半身も増大させていく。

たかだかキスなんて思ってた。

舌のざらつきが重なって擦られると、しびれるような感覚が腰に響いてくる。
時折誘い込むように引っ込んでしまう舌を追いかけて行くと、ちゅるんと吸われて膝が笑う。
吸われたまま舌をこすり合わされると。
やばい。

息が上がり、立っているのもつらくなる。

この人は、まったく…
なんてキスをするんだ。
こんなのもうキスなんかじゃないじゃないか。

愛しさが溢れる愛撫だ。



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