
やっと、やっと…
第15章 8年後…
何か言いたいのに
声が出ない
2人の距離は50㎝程
”久しぶりだね、元気?”
”今はどこにいるの?何をしてるの?
もう働いてるのかな?”
”あの人は、…彼女?”
聞きたいことはたくさんあったのに
8年の年月が私の体を硬くした
「…久しぶり、唯」
俯く私の頭上から智己の声
優しい声
ずっと、ずっと聞きたかった…
「とも、き…、久しぶり」
顔を上げて見た智己は微笑んでいた
あぁ、この顔
この顔が好きなんだ
安心させてくれた表情
やっぱり、忘れられない…
涙が溢れそうだった
私は必死に我慢した
「先輩すみませんー、お待たせしました!」
私達の過去を何も知らない彼女が
2人の世界を破ってしまう
「ありがとうございました!」
何か言いたげに振り返る智己を見ないように、
なるべく笑顔で2人を見送った
