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やっと、やっと…

第16章 再会、そして



智己は私を離すと
私の唇に、自分の唇を押し当てた





智己のキスは優しくて
柔らかくて甘かった



お酒の匂いと、懐かしい匂いがした




「明日は何か予定あるの?」



そう問いかける智己に、
私は首を横に振った







「…家、来る?」





この問いかけには首を縦に振った




残っているカクテルを飲み干し、

お会計を済ませると
お店を出た


お金を出すと言ったのに、
智己は全て払ってくれた




手を繋いで、夜の道を2人で歩く

待ち合わせの駅から電車に乗り
少しのところで電車を降りた




ゆっくりと話しながら
散歩をするように歩いた




「俺さ、高校でも大学でも彼女はいた

でも全然本気で好きになれなかった
その時の彼女に申し訳ないくらい

唯のこと考えてばかりだった」



智己は前を向いたまま8年の間を話した

それは私も同じで、
智己のことはいつも頭の片隅にあった



「8年前、唯が俺に気持ちを伝えようとしてくれてたのは知ってたし、気づいてた

でも、これ以上俺のせいで傷つけたくなかったし
忘れなきゃいけないと思って避けてた」



智己が8年前に私を遠ざけた理由だった

私のことを最後まで考えてくれていた



「あの時あんなに突き放したし、
高校生になってどうしても会いたくて唯に電話した時、番号が変わってたのを知って

あぁ…、嫌われちゃった

って思った

それなのに、忘れられなかった」



私たちは、おんなじだった

お互いを思って離れて、
忘れられずに苦しんでいた




「でも、今まで諦めなくてよかった

また会えて、唯も好きでいてくれた



ありがとう」




智己は私を見下ろし、
微笑んだ







夏の暑い夜

東京の空はいつまでも明るい




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