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やっと、やっと…

第17章 本当の初めて



智己に手を引かれ、
寝室へと向かう


決して広くはない1LDK
寝室への道のりさえも長くもどかしく感じた



ーーーガチャ



セミダブルのベッドと、横には小さなサイドテーブル
反対側にはフロアライトと仕事用だろうか、PCが設置されたデスクがあるだけのシンプルで清潔な寝室だった


智己がフロアライトを付けると、
オレンジ色でほんのり優しい光が部屋を包んだ。



ベッドの脇に立つ私へ智己が近づいてくる
私を見下ろす眼差しは優しく
光を背に受け、首筋や鎖骨が色っぽく影を纏った
柔らかいTシャツが智己の胸板を感じさせ、
体の真ん中の深いところが疼くのを感じた

吸い寄せられるように自分から寄り添うと、
智己の胸は強く脈打っていた





「ーーっ」





智己は私を強く抱きしめ、
首元に顔を埋めた




「…ごめんっ、もう無理だよ」



そう呟いたかと思うと、
私の背中を支えベットへと倒れ込んだ




フワッと包まれた柔らかい肌布団からは
優しくて懐かしい匂いがした

いろいろな記憶が一瞬で蘇り
説明のできない感情がが込み上げ
また涙が流れた



「唯はこんなに泣き虫だったかぁ…?」



そう微笑みながら涙を拭い
智己はまた、優しくキスをした


幸せだった
男性と関係を持つ時、
こんな気持ちに包まれるのは初めてだった


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