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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 てっとり早くいえば、長年苦楽を分かち合ってきた番頭である嘉一と女主人お須万が時ここに至って改めて互いを男女として意識したのがそもそもの始まりだ―ということになる。
 確かに、それはそうだろう。瓦版によれば、嘉一が伊勢屋に丁稚として奉公に上がったのは十のときのことだという。

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