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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 かつてお須万を殺し、自分も共に死のうとまで思いつめたことがある清七だけに、今また、己れが以前と同じことを考えていることを改めて知り、あまりの罪深さ、怖ろしさに身をおののかせた。
 その時。腕の中で小さな声が聞こえ、清七はハッとした。つぶらな双つの瞳で一心に自分を見上げる無垢なまなざし。
 この眼は、いつかどこかで見たような気がする。そう考えている中に、ふっとある情景が鮮やかに甦った。

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