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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 長屋の木戸口を抜け、しばらく歩くと、慣れた光景が見えてきた。幾度となく通った道、一年前のあの夜、お須万と出逢ったあの場所。
 今日も川は変わらず流れている。橋のたもとには、枝垂れ桜が薄紅色の清々しい花を満開に咲かせていた。
 時折吹く風に、花びらが舞い上がり、水面に落ちる。無数の花びらを浮かべた川面が陽光を受けて、きらめいていた。

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